◎一歳児(2)2009/07/09

 竹ちゃんの子どもは生後10ヵ月だった。両親の膝の上を時々行ったり来たりしながら物珍しそうに自分を覗いて声を掛ける見知らぬ大人たちを見つめていた。恐れるでも恥ずかしがるでもなく、実に大人しく膝に収まっていた。法要が始まり読経が始まっても子どもの様子は変わらなかった。幼い頃、何かにつけて母親を困らせたという自分の子ども時代を思うと、そこには雲泥の差がある。竹ちゃんの子どもは母親の仕事の都合で、生後6ヵ月を過ぎたときから病院の保育園の世話になっているという。
 いま保育園には同じ年頃の子どもが大勢預けられるようになった。早い子どもは生後2ヵ月から保育園ボーイや保育園ガールを余儀なくされる。入園した当初は大変である。毎日毎日泣いている。朝から夕方まで休むことなく泣き続ける。泣きやむのは疲れて眠るときだけだ。目を覚ませばまた泣き始める。最初は保育士も途方に暮れるが、簡単に泣きやむことはない。
 泣くのは生後2ヵ月で入った子も8ヵ月で入った子も変わらない。ところが入園して何ヶ月か経つうちに、だんだん泣かなくなる。朝のうち親と別れてしばらくの間は泣いても、そのうちに泣きやんでしまう。保育園という環境に慣れるのか保育士に慣れるのか、とにかく泣くことが急激に減ってしまう。そして2ヵ月で入った子が、後から入った自分より大きい8ヵ月の子の泣く様子を不思議そうに見ていたりする。
 今年も4月には1歳未満の乳児が何人も新しく入園してきた。そしてどの子も慣れるまで毎日泣き続けた。そんな新入園児を尻目に、前年度から園に預けられている同じ年頃の子どもたちは皆お気に入りの担当保育士に寄り添ったり甘えたりしながら、いっぱしの先輩面をして保育園での時間を過ごしている。どうせ保育園に預けなければならない事情があるとしたら却って早いほうが子どもにはよいのかも知れないと思うひとときでもある。(つづく)

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