■求心力--新釈国語2009/07/03

 ある目的のために政治運動や社会運動などを行う団体において、そこに結集した者同士が目的達成のために団結し、代表など組織運営の中心となる人の下にまとまろうとする力のこと。政党のような互いに何らかの主義や主張が共通する者同士が寄り集まって結成する団体であっても、これを単なる仲良しクラブで終わらせないためには、組織としての最低限の約束事や決まり事が必要である。それがないと細部で意見が分かれたり利害の対立があるたびに烏合の衆となって組織は瓦解し、結党の目的を果たすことができない。党内の意見をうまくまとめて利害を調整し、参加する者が一丸となって目的達成に向かえるよう努めるのが党首や代表の役割であるとするなら、求心力は党首や代表を裏で支える力だとも言える。
 この力は政党活動を円運動にたとえることで、力学的に説明することも可能である。物体の運動に関する基本的な法則は発見者の名前を採って「ニュートンの法則」と呼ばれるが、第1法則は有名な「力を受けない物体は静止または等速直線運動を続ける」である。つまり運動している物体は、そこに何らかの力が働かない限り真っ直ぐに進むことになる。だから等速ではあっても円運動している物体には何らかの力が加わっていると見なければ、円運動の説明は成り立たない。そこで考え出されたのが速度に対して垂直(つまり中心方向)に向かう力の存在である。力学では円運動の中心方向に向かうこの力は、向心力と呼ばれる。
 政党活動における求心力は自然界における向心力とよく似た働きをしている。円運動の中心には党首や代表がいて、その周囲で活動する党員には力学でいう向心力が常に働いていなければならない。この力が薄れたり弱まったりすると運動を続ける党員達の行動はたちまち円運動から直線運動へと変じ、組織としてのまとまりは崩れることになる。人間界では、党首や代表を中心にまとまろうとするこの力を人間くささを感じさせる求心力などと称しているが、力学的な力の関係で見れば物体の運動と大差ないことに気づく。

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