○無駄花(8)--夏野菜2009/07/12

 海軍出身の叔父はポツダム宣言受託のお陰で、平成の今日まで命を長らえることができた。妹など身内との面会も済ませ、後は出撃の命令を待つばかりというときに8月15日を迎えた。その上官が詩人の田村隆一だったことは後年、偶然に知った。
 隣人の医師も昔は飛行機乗りで、やはり田村の部下だった。飲んべえの上官を案じ、田村に飲み過ぎを諫めているうちに先に亡くなってしまった。隣人が健在の頃はふらりと近所にも姿を見せたが、叔父とそんな関係にあるとはつゆ知らず、とうとう一度も声を掛けないうちに田村も亡くなってしまった。
 ある時、叔父の家で胡瓜の食べ方が話題になった。「漬け物はやはり辛子漬けが一番夏向きだし美味いよ」と話したら、従兄弟が「煮付けも悪くないぜ」と言い出した。未だかつて胡瓜を煮て食べるという経験も発想もなかったので浮かぬ顔をしていると、突然「この人には胡瓜の味噌汁をさんざん飲まされたものだ」と、懐かしそうに田村の著書を指さしながら呟いた。
 写真は前回の胡瓜を雌花の側から撮したものである。節の付け根の太さに注目すると雄花との違いがよく分かる。(胡瓜の最終回は本日17時頃の予定)

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック