○無駄花(12)--夏野菜2009/07/17

 今日の一枚は米茄子(べいなす)と呼ばれる品種の雌花を撮したものである。雌しべが溌剌奔放に開いている。また蔕(へた)の部分に鋭い棘(とげ)が何本も出ていることにも注意したい。茄子を枝から切り取るとき、この部分に指が触れると刺さって激しい痛みを感じる。もっとも父の指先は長年の作業で野球のグローブのように皮膚(かわ)が厚くなり、茄子の棘くらいでは刺さることはなかった。
 茄子(カシ)は中国から伝わった漢名である。熱帯インドから伝わり、多年生が温帯で一年生に変じた。中国でもこの呼称を用いるが、草冠に加と記す「茄」の字の原義は「説文」によればハスの茎を表す。ついでハスの意にもなった。ナスになったのは、さらにその後である。加には上に載せるという意味があるそうだ。
 日本で何故これに「なす」の訓を当てたかは不明だが、現代中国語ではこれを giezi(eにアクサン)と発音する。日本語音の「カシ」なら場合によっては「なす」に聞こえてもさほどの不思議も感じないが、giezi ではそうもゆかない。いつ誰が伝えたものか精査してみないと軽々には判断できない。正倉院の時代よりさらに遡る必要があろう。(これで茄子の項は終り、次回はトマトの予定)

  朝風に茄子の無駄花落るなり 雨亭

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック