○トマトと赤茄子1--夏野菜 ― 2009/07/25
子どもの頃、近所に10人の子どもを無事に育て上げた老婆がいた。昔、乳母をお願いしたことがあり、顔を見れば必ず声を掛けてくれた。ある時、老婆の高校生になったばかりの末娘が虫垂炎を患って入院した。その頃、虫垂炎はもっぱら盲腸と呼ばれていた。お見舞いに訪ねてゆくと、普段は気丈な老婆がいつになく元気がなく部屋の隅でしょんぼりしていた。そして「赤茄子は盲腸になるから絶対に食べるなと言っておいたのに娘は食べてしまった。無事に退院できるといいが」と涙ぐんだ声で話してくれた。赤茄子とはトマトのことである。
明治の中頃に生まれたその老婆は生涯トマトだけは決して口にしなかった。理由はトマトの種が虫垂炎の原因になると固く信じていたからだという。その話をいつ頃どこで誰から聞かされたものかは分からなかったが、老婆は信じて疑うことがなかった。老婆が亡くなった翌年、三回忌の法要が済んで10人の子ども達が母親の昔話を始めたとき、その中のひとりが「おい、母さんの言いつけは守っているか」と兄弟姉妹に尋ねた。末娘を除き全員が守っていた。虫垂炎になったのも末の娘だけだった。彼女の記憶によると、虫垂炎を患う前日か前々日かに友達の家で確かにトマトを食べたそうである。「だけど、もう盲腸は取ってしまったから兄さん、いくら食べても私は平気よ」と笑っていた。
写真は家庭菜園などでよく目にするミニトマトである。一口にミニトマトと言っても最近は種類も多く、かなり大粒のものから小粒のものまでいろいろある。非常に丈夫で病気に強く、しかも繁殖力がある。放置すると熟した実が地上に落ちて種子が地中で越冬し、翌年また芽を出して実を付ける。場所は秘密だが、そうして野生化したミニトマトの群がる場所を知っている。その味がまた、どの農家のものよりも甘いから不思議である。
明治の中頃に生まれたその老婆は生涯トマトだけは決して口にしなかった。理由はトマトの種が虫垂炎の原因になると固く信じていたからだという。その話をいつ頃どこで誰から聞かされたものかは分からなかったが、老婆は信じて疑うことがなかった。老婆が亡くなった翌年、三回忌の法要が済んで10人の子ども達が母親の昔話を始めたとき、その中のひとりが「おい、母さんの言いつけは守っているか」と兄弟姉妹に尋ねた。末娘を除き全員が守っていた。虫垂炎になったのも末の娘だけだった。彼女の記憶によると、虫垂炎を患う前日か前々日かに友達の家で確かにトマトを食べたそうである。「だけど、もう盲腸は取ってしまったから兄さん、いくら食べても私は平気よ」と笑っていた。
写真は家庭菜園などでよく目にするミニトマトである。一口にミニトマトと言っても最近は種類も多く、かなり大粒のものから小粒のものまでいろいろある。非常に丈夫で病気に強く、しかも繁殖力がある。放置すると熟した実が地上に落ちて種子が地中で越冬し、翌年また芽を出して実を付ける。場所は秘密だが、そうして野生化したミニトマトの群がる場所を知っている。その味がまた、どの農家のものよりも甘いから不思議である。
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