黄砂と黄沙(1)2009/03/18

 また黄砂の季節がやって来た。気象庁の観測によると日本列島への飛来降下は毎年3月~5月の3ヵ月間に集中している。全くもって有難くない現象だが、この語は春の季語にもなっていて「黄砂降る錨ころがり大いに銹び」(横山白虹)などの句が詠まれている。但し季語としては霾(つちふる)や霾風(ばいふう)の方が格上ではないだろうか。
 さて注意深い読者はお気づきだろうが最近の辞書にはたいてい、見出しの下にもうひとつ「黄沙」という漢字表記が並んでいる。最近と断ったのは、例えば初期の「広辞苑」には黄砂だけが掲載されていたからである。因みに「広辞苑」より2年ほど早い昭和20年代に出版された三省堂「新百科辞典」にはまだこの見出しはない。しかし昭和34年(1959)の平凡社版「俳句歳時記」には「黄沙」が掲載されている。