さもしい(1)2009/03/04

 人間にとって言葉は、自分の考えや気持を相手に伝えるための重要な手段である。しかし言葉にはそれを発した人の印象をも伝える働きがあるため、不用意な発言は思わぬ誤解の原因にもなる。聴衆に向かって演説する政治家は元より、社員や株主を前に会社の現状や将来について自分の言葉で伝えたいと考える企業家の場合、言葉に対する感覚を養い、語感が鈍ることのないよう日頃から心掛ける姿勢が求められる。
 言葉に対する感覚を養うには、英単語の暗記法に見るような同義語への単なる置き換えでは用をなさない。そうではなくて、それぞれの意味合いを用法とともにしっかりと把握する必要がある。例えば事物の性質や状態を表すときに使う言葉であれば、その言葉を使う人がそれらの性質や状態をどういう視点でとらえるか、否定的な意味合いでとらえるか、肯定的な意味合いにとらえるか、それともどちらにも属さない中立的な立場でとらえるか、常に考えてみる。人間の感情や心情を表す言葉の場合も、同様に否定的・肯定的・中立的の3つに分けて理解し、みずからの語感として保持する。
 こうして、「部屋がきれい」「心がきれい」というときの「きれい」は共に肯定的、「芸が細かい」というときの「細かい」もどちらかと言えば肯定的、しかし「神経が細かい」となると否定的な要素も現れ、「勘定が細かい」に至っては否定的な要素が勝るといった具合に整理し直してゆく。そうすれば、肯定・否定の境界線上にある「灰色の」言葉の特徴などもおのずから見えてくるはずである。

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