山桜・ヤマザクラ2009/03/30

峰の桜
 例年なら4月の声を聞いてから目にするはずの山桜を今年はもうあちこちで目にした。花が咲くのと葉が出るのが一緒だから中には葉柄や出始めの葉の紅色の方が勝るものもあって、あちこちの峰や斜面を白や薄紅色に染めている。山桜は花の色だけでなく色彩や光沢が色とりどりの若葉も共に楽しめる希有の植物と言えるだろう。加えて周りの雑木の中にも芽吹き始めるものがあって、この時季の山や丘にはさながら墨絵から水彩画への衣替えでも眺めるような淡い風情の、えも言われぬ味わいがある。古今集の「山ざくら我みにくればはるがすみ峯にもおにも立ちかくしつつ」は、まさにこうした情景を詠んだものであろう。
 しかしこうした春の楽しみを全く別の観点から眺め、近づいて精査するのが植物学者である。そして「いま目にしている山桜はヤマザクラだけではありませんよ」と教えてくれる。ややこしい話だが、日本の山に生える桜の木にはいろいろ種類があって学名を Prunus jamasakura と称する正真正銘のヤマザクラの他にもミヤマザクラ、カスミザクラ、タカネザクラ、オオシマザクラ、オオヤマザクラなど多くの野生種が春になるとそれぞれに白や薄紅の花をつけるということである。なお学名がなぜ「ヤマサクラ」と清音になるのかは聞き損ねたが、幸いなことに一目千本で知られる吉野山の桜はヤマザクラでよいそうだ。

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