◎季節の言葉 梅一輪2010/01/12

  むめ一輪一りんほどのあたゝかさ 嵐雪


 人口に膾炙する「梅一輪…」はおそらく、この句から出た言葉であろう。だが原典とされる「玄峰集」写本には「梅」ではなく「むめ」と記されている。「うめ」は梅の中国音を真似たものだが平安期以降「mme」とする発音が一般化し、写本の多くがこれを「むめ」と仮名書きした。仮名文字は日本語の発音記号でもある。

◎言葉の詮索 日溜まり2010/01/12

 秋が深まる10月も下旬に入ると日溜まりが恋しくなる。地域にもよるが、日溜まりの恋しい季節は翌年3月までは続くだろう。日溜まりとは文字通り日光の暖かさが溜まっているように感じられる場所のことである。が、辞書には次のように記されている。

○広辞苑(新村出編 岩波書店 1955)日光のよくさして暖かい場所。

○大辞林(松村明編 三省堂 1988)日あたりのよい暖かい所。建物などが風をさえぎり、吹きさらしでない場所についていう。

○大辞泉(小学館『大辞泉』編集部編・松村明監修 小学館 1995)日当たりがよくて暖かい場所。狭い範囲についていう。「公園の―」

 上記の3例を見て気づくのは、こうしたポピュラーな言葉に対する扱いの差である。それぞれの辞書づくりの特徴が現れていると言ってもよい。「広辞苑」の場合はいかにも最終段階の人海戦術による語彙増強作業の中で加わったという感じが出ているし、「大辞泉」の場合もいかにも編集部という集団がつくりあげた可もなく不可もない辞書だという感じを正直に残している。(つづく)


○白梅日記082010/01/12

 今日は丸一日、お日様の顔を拝むことなく過ごしました。朝から曇り空が続き、そろそろ真南にお日様の影でも見えないかと思って顔を上げると、冷たいものが頬に当たりました。雨粒でした。明日は思いっきり咲いてみせるぞと意気込んでいた近くの枝の姉花は、雨粒を美味しい美味しいと舐め回すのに忙しそうでした。


 私の記憶では確か寒の入りの朝、まだ暗いうちにほんの少しだけ降ったことがあります。今日はそれよりは長く降り続きました。お陰で全身に化粧水を振りかけたような瑞々しい気分に浸ることができました。これが人間でいうところの潤いでしょうか。今夜は皆、豊かな満ち足りた気分で眠りにつけそうです。

  梅ひらくこころの起伏しづかなり 広瀬直人