月を指せば指を認む2009/03/13

 禅法に「月を指せば指を認む」という喩えがある。文字面をそのまま解釈すれば「月を指さして教えているのに、(あなたは)月を見ないで(私の)指を見ようとする」という意味だろう。辞書には「道理を説いて聞かせてもその本旨を理解できず、その文字や言語に拘泥して詮索することをいう」と記されている。(広辞苑)
 日本語という言葉の理解にも似たような風潮がある。例えば額田部氏(豪族)の理解に「大言海」を引いて「額」という文字の字義を探ったり、柞磨(地名)が意味するものを求めて「柞」や「磨」の字義を調べたりすることが罷り通っている。こうした手法で編み出された語源辞典の類も少なくない。
 明治の初めに急造された苗字や明治以来の町村合併で生まれた新地名ならともかく、古来の地名や名称の調査を行おうとしてそれらの漢字義を考慮するのはまさに月を見ずして指を見るに等しい短慮である。縄文弥生の時代から日本列島に居住し、列島の自然や風土と闘って独自の文化を生み出した名もない無数の先人たちの思いを忘れてはならない。

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