◎季節の言葉 注連飾り2010/01/03

 中国人の伝統的生活態度の規範や知恵を記した「顔氏家訓」によれば、注連(ちゅうれん)とは葬式において死者を納めた棺を見送った後その魂が再び家の中に舞い戻らないよう門口に張り巡らした縄の意である。こうした風習が古代の日本にも伝わり、その土地土地で土俗的な信仰と混じり合って日本の「しめなわ」の形や習慣は生まれたものだろう。

 漢字は後から宛てたものだから「しめ」には「注連」以外にも「標」「占」「七五三」などが用いられる。その意は中国同様に外部からの侵入を禁じようとするもの、標識として神域と不浄界とを区別するための目印、神の御座所であることを強調するもの、藁(わら)の茎を左縒(ひだりよ)りに綯(な)いながら三筋、五筋、七筋と垂らす縄の綯い方を表すものなど微妙な差がある。


 近年は稲藁ではなく、畳表に使われる藺草(いぐさ)を用いた高級感のあるものが製造販売されている。そのため見た目が綺麗で、松が取れた後に焼き捨てるには惜しい気もする。が左義長とか、どんど焼き、さんくろう焼きなどと呼ばれる小正月行事の火祭りに、門松や書き初めなどと一緒に焼いて一年の無病息災を祈るのが多くの土地の古い仕来りと言えよう。蛇足ながら「注連飾る」は年の瀬、冬の季語である。

  注連はるや神も仏も一つ棚 阿部みどり女

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