◆日本の政治風土2009/09/02

忘れてはいけないこと(1)

 民主党など野党3党による政権交代が現実のものとなりました。暴力や武力に頼ることなく選挙という民主的な手段によって現政権に退場を命じたのです。私たちの国は経済的には先進国と言われながら、政治的には世界の大勢から遅れた大変後進的な国でした。狭い島国の中で助け合い肩を寄せ合って辛抱強く生きてきたが故の国民性が、いつの間にか大きな変化を望まない方向へと人々の意識を固定させてしまったのでしょう。
 今から141年ほど前の明治維新によって誕生した薩長土肥(鹿児島、山口、高知、佐賀)を中心とする勢力は、自分たちの生活と権益をどこまでも守り通す頑強な官僚組織を東京の霞ヶ関を根城につくりあげてきました。余談ですが、上記4県の今回の選挙結果を眺めると奇妙な符合のあることに気づきます。一度習い性となったものを変えるのは容易なことではありません。それが風土であり気質です。県民性などと呼ばれることもあります。今回の選挙は図らずも、それぞれの地域と霞ヶ関との距離を示す結果にもなったようです。(つづく)

 写真はセンニンソウと呼ばれる蔓性の植物です。節ごとに幾つもの花を付け群がって咲きます。鼻を近づけると、よい匂いがします。学名をクレマチス・テルニフローラ(Clematis terniflora)というそうです。秋、その種子を見ると「なるほどクレマチスの仲間だ」と納得します。

○稲の花--実りの秋2009/09/02

 最近は米を食べない日本人も多いと聞く。いずれ「御飯ですよ」は廃(すた)れ、「お食事ですよ」に代わるのだろうか。思い起こせば子どもの頃、学校では盛んに「日本人は木と紙の家に住んでいるから火事が多い」「米食だから脚気が多い」と繰り返し教わった。給食の時間には米国支給の援助物資である脱脂粉乳を飲まされ、コッペパンを食べさせられた。
 考えてみれば給食とは妙な言葉である。御飯なら家から弁当箱に詰めて持参できたし、たとえおかずがなくても、たくわんか梅干しだけでも十分に美味しく食べられた。にもかかわらず無理やり幾ばくかの給食費を徴収され、そのあげくに不味いものを飲まされ食べされられるのだ。現金が乏しい農家の子供にとって、これほど理不尽なことはないと感じた。
 脱脂粉乳を溶かしたミルクの味は実に酷いものだった。それでも無理に飲まされた。仕方がないので、いつも吐きそうになるのを必死にこらえ、時間をかけて飲み込んだ。そのためか、食べるのが遅いと教師によく叱られた。コッペパンの味も酷いものだった。それを誤魔化すためか時々ジャムが薄く塗られていることもあった。
 しかしこうした給食が日本の子供達を将来の米国農業の消費者に育てるための周到な計画の一部だ、と教えてくれる教師はいなかった。政治家が何と言っていたかは知らないが「敗戦国の子供だから食べられるだけでも有難く思え」くらいの思し召しで政治が行われていたのではないだろうか。家に帰れば田圃も畑もあることが誇らしかった。これさえ耕していれば食べ物に困ることも無理に不味いものを食べさせられることもない、と強く思った。

  擂鉢の底の山科稲の花 佐田あはみ