○百日紅(2)--夏の終りに2009/09/19

 和名のサルスベリはしかし、百日紅だけに与えられた呼称ではない。サルスベリとは猿が滑るの意だから、そのまま漢字で記せば猿滑となる。だがサルでも滑りそうな幹肌のつるつるした樹木は他にもある。例えば沙羅は幹の表面が百日紅以上に滑らかだ。手で触ってみると、いかに滑らかでつるつるしているかがよく分かる。従って沙羅をサルスベリと呼ぶ人がいても何らの不思議もない。実際、沙羅にはサルスベリという異称もある。
 この季節、百日紅は幹の皮が細長く捻れたようになって剥がれ落ちる。一方、沙羅の幹でも表皮の剥離は起きるが、剥がれる様子がまるで違う。部分的にめくれ上がったところが剥がれ落ちる小規模な剥離である。これが箱根姫沙羅となると剥がれるというよりは、すりむけてぼろぼろと落ちるといった感じである。案外これが樹皮の美しさにおいて沙羅にも百日紅にも負けない、箱根姫沙羅の美の秘密かも知れない。
 今日は子規忌だが、あいにく近所にも知人にも糸瓜(へちま)をつくる人がいない。写真の持ち合わせもない。記憶では胡瓜に似た黄色の花だったように思う。
 支考は蕉門一の論客と謳われた各務支考のこと。江戸前期の俳人、美濃の人である。蛇足ながら冒頭は「こもらばや」と読む。(了)

  こもらはや百日紅のちる日迄 支考

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