○彼岸花--野の草花2009/09/23

 危うく彼岸花を忘れるところであった。秋のお彼岸が近づく頃に突然、姿を現わす。そして茎の頂きに真っ赤な針金状の花を咲かせて、また忽然(こつぜん)と消えてゆく。これまで目にした中で最も壮観だったのは日豊本線を南に下ったときの車窓からの眺めである。田圃の畦道という畦道を、この花の赤色がびっしりと埋めていた。
 この花は近寄って眺めると、豪華な金細工でも施したように花軸を伸ばし、その先に輪を描くようにして咲いている。だが、どこを見ても葉がない。実に不思議な花である。子どもの頃、墓地の周りでよく咲いていた。そのせいか年寄りの中には「ああ嫌だ、縁起が悪い」と言って避ける者もいた。死人花(しびとばな)の俗称さえあるという。
 この花が歌謡曲の文句に登場する曼珠沙華(マンジュシャゲ)と同じものであることは長じてから知った。曼珠沙華と言えば曼荼羅華(マンダラゲ)や摩訶曼荼羅華(マカマンダラゲ)や摩訶曼珠沙華(マカマンジュシャゲ)と同じく梵語由来の語であり、合わせて四華(シケ)と呼ばれる。いずれも天上から降るとされる目出度い花の名前である。それがなぜ逆の印象を持たれるようになったのだろうか。日本列島の先人達と仏教との関係はどうやら少し特殊なもののようだ。

  とびとびに籔の奥まで曼珠沙華 関圭草

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